柔かなキスが全身に降りそそぐ。

カガリがそのじれったさに身を捩ると、シーツと制服の衣擦れの音が妙に耳に響いた。





愛はもがくために存在していたU







中途半端に脱がされた制服からは、水色の下着がチラリと見える。


 「ねぇ、カガリ」


甘えるような声で、アスランは呼ぶ。
だけど、その瞳はどこか意地悪で艶やかな色が滲み出ていた。


「服、脱いで?」


カガリがぼんやりと、翡翠の瞳を見つめる。


「自分、で……脱ぐのか?」


「うん。自分で。」


その答えに、急にカガリの思考に理性が働いた。
カガリは思いっきり顔を横に振る。


「ム、ムリだ!そんなの!」


そんな恥ずかしいこと、アスランの前で出来るわけがないとカガリは顔が沸騰しそうになる。
そんなカガリを見て、アスランの翡翠の瞳は艶然に輝いた。


「じゃあ、今日はキスまでにしとく?」


額に掛かる前髪を優しく掻き揚げて、アスランは首を傾げて聞く。
そんな、とカガリが瞳を揺らすと、アスランはじっとカガリを見つめた。


「俺はカガリの嫌がることはしたくないんだよ。」


そうやって、アスランはカガリを誘う。
自分の理性を押さえ込んで、それもまた本能を呼び覚ます行為だと知りながら。


「アスラン……。」


「ん?」


カガリの自分を物欲しそうに見つめる、潤んだ琥珀の瞳が愛おしいと、アスランは思う。
それなのに、カガリの言葉はアスランの予想の反したものが飛び出る。


「アスランの言う通り、今日はキスまでにしておく。」


「え?」


今度はアスランが焦る番だった。
カガリをじっと見つめると、今度はカガリの方が楽しげな視線をこちらに向けているの気付く。
無邪気な琥珀の瞳が、悪戯っぽく光っている。
アスランはやられた、と思いながら、そんなカガリがまた良いと思ってしまう自分がいて、悔しそうに眉を顰める。


「カガリ……素直じゃないぞ。」


「お前もな。」


いじけるように言葉を紡ぐアスランに、カガリはしてやったりといった表情で笑う。
アスランは、もう一度カガリにキスをして、自分の胸に閉じ込めた。


「まったくカガリは……。」


アスランは溜め息を吐く。


「ん?どうするんだ?」


悪戯めいた表情で、カガリはアスランの頬に伸ばす。
アスランは、自分をからかって楽しんでいるカガリに悔しさを覚えながら、下着の隙間からふくよかな胸に手を埋めた。


「俺はもう我慢できない……。」


素直にそう告げるアスランに、今度はカガリが目を丸くした。
あのプライドの高いアスランが、まさかそんなことを言うとは思っていなかったので、呆気に取られてしまう。


アスランの骨ばった細い指が、制服のボタン外していく。
少しづつ露になる自分の白い肌。
外気の風と触れ合う涼しさと、自分の体の持つ熱に挟まれて心拍数が早くなり、じれったさに下半身がぎゅっと甘酸っぱいほど縮むのを感じた。


「はぁ……」


甘い息が、カガリの口から零れる。
少し伸びた濃紺の髪が、自分の胸の上でゆっくりと動くのを見つめながら、彼の舌と指の早さに合わせて甘い吐息を零していた。
カガリの位置からは、アスランの顔が見えない。


「はぁ……はぁ……んっ……」


アスランの唇が、カガリの胸の敏感な蕾に吸い付いては生温かく濡らしていく。
不規則な息が自分の肌にかかるたび、そこからざわざわした気配が染みのように広がり、カガリはもぞもぞと足を絡めさせてしまう。


「大胆だな、カガリ。」


アスランは、視線だけをカガリに向けると艶然な含み笑いをする。
自分の意識は半分アスランに持っていかれようとしているのに、アスランだけは余裕たっぷりで、カガリは少し悔しくなる。
カガリはアスランのシャツの中に手を伸ばした。


「脱げよ……アスランも……。」


照れ臭そうに呟くカガリに、アスランは微笑む。
アスランはカガリの上で馬乗りになった状態で、シャツを柔らかに脱ぎ捨てる。
相変わらず身体のラインは見事で、カガリは思わず見惚れてしまった。
そんなカガリに気付いて、アスランは首を傾げて「どうしたの?」と。


「べ、別に何でもない。」


カガリがぶっきらぼうに答えると、アスランは穏やかな笑顔を浮かべる。
アスランは、カガリの下着を横にずらすと直接触れ、指までとろけそうな感触に瞳を細めた。
何度かそこを撫でるような触れ方で行き来すると、カガリの足はビクンと震えて足が上がる。


「あっ…ん…」


その声に気を良くしたアスランは、指をゆっくりと沈めて行く。
中で指を捏ねくり回すと、カガリの太ももからじわりと汗が滲む。
アスランは舌を尖らせて、太もものラインに沿って焦らすように汗を舐め取る。


「ん……もぉ……だめ…」


カガリは首を横に振る。


「カガリ?」


アスランはカガリの言葉に、一瞬手を止める。


「いれて・・・」


カガリはアスランの耳元で囁く。
甘い息はアスランの背中を焦らすように駆け上がった。


「……いいのか?」


アスランはなるべく感情を出さないように訊ねる。
今更この行為を止めることなんて無理なことだと知りながら。


「いい。……アスランならいい……。」


カガリは、そう言って潤んだ瞳をアスランに向けた。
アスランは何も考えず、そのままふっくらとした唇に口付ける。
互いの唇を擦りあわすようなキスをして、唾液が隙間から零れ落ちる。



カガリは、息をひそめた。
折り重なって自分とアスランが一つになる行為は、全てが壊されていくのだということをカガリは知っている。
理性も感情も常識も全てが自由になれない。
ただそこにあるのは、アスランが向ける自分への本能と愛情。
それが窒息しそうな下半身の圧迫でも、それこそがアスランの重みなのだとカガリは強いほど感じる。


「あ……はぁ・・・あっん……」


突き動かされたそれは、抉るように奥へ進む。
涙で滲んだ景色に、ぼんやりと浮かぶ濃紺の髪。
カガリは無意識にそれへ手を伸ばした。


「アスラン……。」


「カガリ……。」


アスランは伸ばされた手を握ると、その細い指に自分の指を絡ませる。
愛してるよ、とカガリの耳元で囁けば、カガリは恥ずかしそうに笑った。
そして、その笑顔が、またアスランをどうしようもない感情の渦に引きずり落とす。
愛おしくて愛おしくて、そして悲しいほど切ないと、アスランは熱に浮かされた瞳でカガリを見つめる。


まさか。これが、愛だなんて。



「カガリ。」


「んっ……?」


「愛してる。」


「……うん。私もだ。」











愛はもがくために存在していた




























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