「君ってば、相変わらずみたいだね。」
屋上で煙草の煙が風で揺れている。
制服を着た少年が二人、煙草を片手に冷たいコンクリートの上で寝そべっていた。
少年の言い訳
茶色の髪がさらりと揺れる。
アメジストの瞳が甘く微笑んでいるが、その瞳の奥で一体何を考えているのか未だに掴めない。
「キラ・・・相変わらずって、何のことだ。」
アスランは不機嫌そうに眉をひそめた。
「聞いたよー。あのカガリ・ユラ・アスハを落としたらしいじゃない。」
「・・・あぁ。」
アスランは昨日のキスを思い出す。
「君ってば、昔から女の子を弄ぶの好きだよね。しかも、可愛い子限定で。」
「弄んでるつもりはないが。」
「じゃあ、ラクスは?」
アスランは痛いとこを突かれて黙り込む。
キラは正直すぎる幼なじみの態度を見てクスリと笑った。
「君にとってはどっちが本気なのさ。親が決めた婚約者?それとも可愛い恋人?」
アスランはライターに手を掛け、煙草を吸う。
その問いには答えなかった。
「ラクスもカガリもかわいそうだよね。二人共とてもいい子なのに。・・・僕がどっちかもらっちゃおっか?」
キラは人の良さそうな顔で大胆なことを言う。
そして、こういう冗談を本気で実行に移してしまうのがキラだ。厄介な友人を持ってしまったとアスランは思う。
「お前には紅い髪の女がいるじゃないか。」
「あぁ、そうだったね。」
悪びれる様子もなく、キラは人懐っこく笑った。
そんなキラの態度に振り回されて、アスランは呆れるようにため息を吐く。
「お前も昔から変わらないな。俺の持っているものを欲しがる癖。」
キラはゆっくり起き上がると、満面の笑みでアスランの顔を覗き込んだ。
「僕は女の子が好きなんだ。フレイも好きだし、カガリもラクスも好きだよ。」
無言で煙草を吸っているアスランに、キラはふと真顔に戻る。
そして、そっとキラはアスランの耳元で囁いた。
「だけど、君のことも好きなんだ。だから君の持ってるものが欲しくなるんだよね。」
キラの手はアスランの頬にそっと触れた。
その指先が頬から顎のラインに沿って、静かに流れていく。
「・・・あーあ。カガリ可愛そうだなぁ。純情そうなのに。」
「お前が言うか。」
アスランが吐き出すように言うと、キラは再びいつもの笑顔を浮かべた。
少年の言い訳