憂鬱な少年は空を見る








「君さ、最近煙草の量増えたんじゃない?」



キラは白々しくも、にっこりと微笑む。
その柔らかい笑顔を見ると、自分がいかに最低な人間かと思わされる気がして、アスランは地面に転がる煙草の吸殻に視線を落とした。
 


「最近、カガリとどう?」



キラは、アスランの隣に腰を下ろす。
アメジストの瞳は輝いていていても、それを好奇心と呼ぶには少し知りすぎているようにもアスランには思えた。



「……どうせ、知ってるんだろ。」



アスランが投げやりに言葉を投げかければ、キラは無邪気に笑うだけで何も答えない。
そうして、それが肯定なのだと、アスランには反吐が出るほどわかった。



「女って……本当に面倒くさい生き物だな。」



アスランは疲れた顔で溜め息を吐くと、キラはすかさず「いやいや君のが、」と笑いながら軽口を叩く。
アスランは面白くなさそうに煙草を銜えると、キラはそれにライターで火を点けてやり、その慣れた仕草はもう自分達には自然なことだった。



「何でアスランってモテるのかなー?僕が女の子だったら絶対にアスランは嫌だよ。」


「失礼な奴だな。」


「だって、君のことを好きになったらとことん振り回されそうだもん。」



にこにこ笑うキラは、いつだって自分を試しているようにアスランには見える。
相手の感情を見透かすような汚れのない瞳は、隠された毒を持ち、しかしキラにはそれすらも開き直ったようなところがあって、たまに憎たらしい。



「そういうのを喜ぶ女もいるんだよ、世の中には。」



吐き捨てるように言い放つ。

釣った魚に餌はやらない、なんて言葉があるが、それは女だって同じだとアスラン思う。
自分を好きと言い寄ってくる男より、自分のことを見てくれない男のが気になるものだ。
それが、カガリみたいに自覚なしで男にモテるタイプは、特に。
暫くアスランが黙っていると、キラはアスランの顔に覗き込み少し真剣な顔で「じゃあさ」と口を開く。



「カガリは何で泣いたの?あれは嬉し泣き?」



答えるのがあまりにも面倒臭い質問をキラはするので、アスランは黙り込んだ。
お互いを探り合う沈黙が、柔らかに耳を裂く。



「僕はさ、君には幸せになって欲しいんだよ。」



君には貸しがあるからさ、とキラは呟く。



「貸し……か。」


「そう、貸しだよ。」



アスラン口から零れる煙草の煙は、白い線となって空に上る。
空は空虚な心を映し出すように、平べったくも青かった。












憂鬱な少年は空を見る





































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