今日は星占いで最高に運勢がいいと出ていた。
そしたらタイミングよく彼からのメールがきた。


最高ってこれのことだろうか。

それなら神様、あなたは勘違いしている。



















「珍しいわね、キラからメールするなんて。」


フレイは、屋上の錆付いた柵に寄りかかって、強い風に揺れる紅い髪を耳に掛ける。
その視線の先には、アメジストの瞳をした茶色い髪の少年が穏やかに笑っていた。

 
「カガリは元気?」


「……キラがカガリを心配する理由が、私にはわからないんだけど。」 

 
「だって、女の子が泣いたって聞けば心配だよ。しかも、その相手がアスランとなれば尚更ね。」


フレイが冷めた視線を送れば、キラはニコニコと笑うばかり。


「優しいのね、キラは。」


「うん、知ってる。」


そう言って、キラはまた無邪気に笑う。
憎たらしい笑顔と思いつつも、何だか必死に虚勢を張っている自分の方が馬鹿だと思い、フレイは溜め息を吐いた。


「……どうなるのかしら、あの二人。」


そんなこと本当は誰も知らないというのに、言葉にせずにはいられないとフレイは思う。
そして、キラはやはりというか、フレイの予想通りの答えを口にする。


「さぁ、二人の問題だからね。」


僕等が口に出す問題じゃないでしょ、と。
そりゃあ、正論かもしれないけど、でも。という言葉をフレイは飲み込む。
女ばかり感情的になって、男が冷静でいるのは妙に腹が立つものだ。
だからこそ、フレイはなるべく優しく微笑んでみせる。
そうね、キラの言う通りだと思うわ。と投げやりに言葉を発しながら。






日差しが茜色に染まりはじめると、風も少し強くなった。
フレイは風に揺れる薔薇色の髪を、ネイルで着飾った白い指で髪を抑えると、キラはそれを眩しそうに見つめている。
そうして、キラは「でもさ、男っていうのは」と口を開く。


「女の子に本気で泣かれるとどうしていいかわらないんだよ。」


……それが好きな子だったら特に、ね。とキラは意味あり気に微笑む。
フレイはその顔を見ることができない。苦い顔をして。


「それは、重症ね。」


そんなの男のナルシシズムよ、と心の中で思ってはみたけれど、そんなものに縋る自分もいたわけだし、あまり人のことは言えないのだと思う。



それからキラとフレイは言葉をなくし、共に歩み寄ると自然に唇を掠めるように重ねた。
それ以上の触れあいは最近していない。



きっと自分達はカガリ達のように重症でもなければ、ディアッカとミリアリアのように正常でもないのだと、フレイは思う。
何か少し欠けていて、それを埋めるように昔は欲望という名の、はしたないものに溺れていったけど、最後の一歩でそれを埋めることを少しフレイには戸惑われた。
それは、キラがそれを望んでいないということを知っているからなのだと思う。
そして、自分もと心の中で付け足す。




唇が離れるとき、フレイはキラの口が動くのを見た。
キラの言葉から発せられた久々の言葉に、フレイの瞳は揺れる。


「何で……そういうこと言うのよ……。」


なるべく抑えた声は少し擦れていて、二人の間に不安気な余韻を残す。
キラの顔を見れば、自分の瞳を真剣にじっと見つめられていて、ますますどうしていいかフレイにはわからなくなった。


キラはただ寂しそうに微笑むと、フレイの白い陶器のような肌に触れる。
優しく、壊れ物を扱うかのように。


そうして、答えを求めるかのように自分を見つめるフレイに、キラは彼女の耳元で囁く。




「だってさ、ぼくたち別れの匂いがするから。」





だから、僕達はいつまでたっても寂しいままなんだ、
とキラは呟いた。






フレイ。




僕の美しい人。





今のうちに、体の中にある好きを全部君に捧げるから。










”すきだよ、フレイ……”















傍 観 者 は 嘘 を つ く




























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